マリア様がみてる フレーム・オブ・マインド

「4月のデ・ジャヴ」は今野先生らしいミスリードとほんのりファンタジー風味です。それ程大掛かりな物ではないですけど、最後まで適度に結末を想像させない配慮は、なるほど小説とはこう書くものかと思いました。しかし、リリアン姉妹制度は修羅場量産制度と言えなくも無いと思います(笑)

満を持して登場した桂さんの「お姉さまがいたって、他の人に心が動く事ってあるものだわ」は衝撃発言でした(笑)リリアンのスール制度っていうのは「後輩を導く」っていうのが建前のはずなのに、妹が他の人と関係を構築する際に恋愛に準ずる拘束力を実際は持っている例が多い事を示しているからです(笑)つまり実際は恋愛関係に有る姉妹が多いと言っているわけです(笑)

「四葉のクローバー」はリリアンもやっぱり結構どろどろした所が有るんだなと思いました。っと言いますか、みんな結構真面目で本気で人を思う人が多いから、むしろ普通の学校より本格的な形でどろどろしているような気がします(笑)令ちゃんの魅力の何割かは由乃んで出来ている、と言うのは見事な観察で、流石にちさとさんも並ではないと思います。朱さんがどんな人か考えたんですけど、きっと着実で人との関係を成熟させるのが上手い人なんじゃないでしょうか(予想)どっちが良いかは別として、繭さんとは鮮やかに好対照でした。

「枯れ木に芽吹き」は江利子さまと克美さんの両方が、この短編が始まる前と終わった時を比べるととても成長している事が分かるのが流石緒雪先生らしいです。笙子ちゃんは蔦子さんとのかかわりを指摘されて狼狽していましたけど、そこまで大袈裟なリアクションをするのは何故でしょうか(白々しい)

「悩んだ時には、名探偵由乃にお任せあれー」「・・・」の遣り取りが笑えました。特に由乃さんの台詞の語尾が「!」ではなく「ー」なのが、由乃さんが自分の見られ方を自覚しているのか、乾いた感じで良いです(笑)

「黄色い糸」は江利子さまのレア物ゲットのためのトライアルアンドエラーの歴史に感心しました。鍛えが入っていますね(笑)

「不器用姫」は一度コバルト本誌で読んでいたんですけど、もう一度読んでさゆりさんの友達がちょっと思慮が足りないんじゃないかという感想を持ちました。以前親しかった人間を突き放すというのですから、何はともあれ先に本人に言わせるのがやはり筋だったと思いますし、言えないなら言えない理由についても質すべきですよね。

蔦子さんの女子高生の写真への執着はえろーす故だと思っていたんですけど、これほどリリアンの内側で起こっている事が伝わってくるなら、それもとても楽しいのかもしれません(笑)

「光りのつぼみ」は可南子の「私は、そんな愚かしい真似はしない。光りが恋しければ、自分から駆け寄っていけばいいのだ。」が笑えました(笑)可南子の行動は客観的に見て愚かしいに加えてかなり怖かったですよね(笑)

「温室の妖精」は妖精に成るに際してのニックネームが有るのが今野先生らしいなと思いました(笑)ロサ・ギガンティアとか色々有りますけど、ああいう特別な名前が無かったらこれほどのブームにはならなかったと思うんですよね。

「ドッペルかいだん」はアリコちゃんは蔦子さんが知らないというのだから、校内の人の可能性は低いかもしれませんね・・・と思ったら(笑)いや~ちょっと反則気味ですよね。辻褄も微妙ですし。BLBL多いなと思っていたんですけど(笑)

「A Roll of Film」は笙子ちゃんがフィルムに蔦子さんの名前を書く所がやはり一番のハイライトでしょう。笙子ちゃんも乙女になったものです。挿絵も可愛いです。

纏めての感想としては、緒雪先生はマリみて以外の作品も玄人筋の評価が高いと聞きますが、メインキャラクター以外が主な登場人物だったので、そういった緒雪先生の技を一層味わえたように感じました。「フレーム オブ マインド」は糊しろとしては最高でしたし、単独の話としても蔦子さんと笙子ちゃんの絆に由乃さんの可愛さ祐巳さんのほんわかした雰囲気と盛り沢山でした。密度が濃くて面白かったです。

それにしてもそろそろ三年生の卒業で、マリみてのメインストーリーである祥子さまを取り巻く話に一定の区切りが付くと思うんですけど、もしかしたら融小父様の愛人囲いなんて「なかった」事になるのではないかという気がしてきました(笑)それ以外の収束が思いつかないんですよね・・・。

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