こばと。 第十九話「…ホワイトクリスマス。」

うぉぉ、みきてぃ勝ちましたね！今日は入って来た時から綺麗だと思ったんですよ（後付）。ワンミスで抑えたのが精神力の強さでしたね！
エキシビジョンも、優美で、深い意味で雅でした。よかったですねぇ。

甲子園で延長されてこの回を録り逃してしまい、再放送を待つこと幾霜月。やっとこ放送されました。
しかし、しばらく観る気になれず、今日になったのですが、やっぱりまだ早かったかもしれません。
男キャラが幼少の孤独を語るお話ですが、登場人物が置かれている環境より、日本の現実のほうが遥に緊迫感があって、観ていて切実感が無いんですよね。

ただそもそもこの男キャラには共感できていなかったような気もするので、元々かもしれません。
歴史上には例えば、キリストは私生児で苦労したという噂ですし、イスラム教は孤児に優しいですけど、ムハンマド本人が孤児で苦労したかららしく、それを昇華して精神的に成長してきた人なんですよね。
最近ではマンデラさんにそういう苦労を苦労としない精神力の強さを見出して、格好良いなと思ったりするんですけど、それに比べるとこの男キャラはあんまり格好よいとは思わないんですよね。
基準が厳しいですし、それでは物語を作りにくいんですけど・・・。

また、観ているこちらが明るくなり切れない所もあって、まぁ、仏教では不動心を強調すると共に大悲を大事にするんですよね。
盤珪さんにも、子どもを亡くした親に向かって、悲しむと子供が親不孝になるから悲しむのを止めなさい、といったというエピソードと、本人が弟子が心配で病気になる位であった、というエピソードがあるんですよね。
津波の後に、ことあるごとに、不動心（不生）と悲しみ（大悲）の関係について考えさせられますし、ここら辺が仏教の追求し甲斐がある、妙味のあるところではないかと。

とはいえ、こばとちゃんは可愛いし、涙が綺麗なのでおーるおーけーです。

「こばと。」はCLAMP作品の中ではＣＣさくらに似ていると思うんですけど、一つ大きな違いがあって、それは決め台詞が無いんですね。
今回の震災でさくらたそから「絶対だいじょうぶだよ」とメッセージが届きましたけど、この決め台詞からＣＣさくらの面白い構造がみえてくるように思います。

仏教は境地主義といった面があって、最近「邪人正法を説けば、正法も邪法となる。正人邪法を説けば、邪法則ち正法となる」（夢中問答集　講談社学術文庫版１９８ページ）と具体的に書いてあるのを見つけましたけど、悟っている人が言えば何を言っても名言になるし、駄目な人がお経を引いてもそれは駄目である、という考えがあるんですよね。
趙州の「庭前の柏樹子」が典型で、井筒俊彦さんが意味論的解釈を加えていますけど（意識と本質　３６４ページ）、要するに悟った人が言ったから含蓄がある言葉である、ということがいえると思います。
例えば天上天下唯我獨尊と言ったとすると、お釈迦様がいえば世界でたった一人の自分、といった意味になりますし、珍走団が言えばただの夜郎自大の言葉であるといえるわけです。

こういう視点から「絶対だいじょうぶだよ」をみていくと、いろいろな取り方が出来ます。
良く取れば天命に任せるといいますか、安心立命の境地。道の思想をある面からみたような言葉である、といえると思います。
キリスト教的に言えば神の計らいを信じます、とか、そういう積極的な言葉としてとることも出来ます。

しかしまた、愚者の思い込みの言葉である、ともとることが出来て、実際にHoLiC（１３巻１０９ページ）前後で「願えば叶う」という言葉の二面性を取り上げられていますけど、質の悪い言葉である可能性もあるわけです。

ではＣＣさくらのさくらたその台詞はどちらかといえば、それは本編を読めば解るわけで、明らかに賢い子の言葉です。つまりＣＣさくら全編は「絶対だいじょうぶ！！」（１１巻　１１８ページ）を始めとした、このキーワードの修飾節である、という構造が東洋哲学を通してみると浮かび上がってくると思います。
それにしても、だいじょうぶって、ひらがなで書いてあると、濁音があって鍛えの入った安定感がありますね。